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アドベンチャーズ・イン・ミニマル・エレクトロニック・サウンド @ 京都Metro

Peter Christopherson, Esplendor Geometrico, Robert Gorl, Coh
2007/4/14
京都Metro

名古屋の自宅を午後一時過ぎに出て、午後四時頃三条に到着。まずは京都国立近代美術館の展覧会を観て、ギャラリー16に寄ってから、徒歩でメトロへ向かう。少し時間があったので途中のカレー屋で夕食をすませる。そうして到着した数年振りのメトロは何も変わっておらず、懐かしい心地良さを感じた。この日は物販でEGの持っていない作品(EGは廃盤が多いのだが、この日は多くの見かけない作品が売られていたので)、Robert Gorlの新譜などのCDを大量に購入、約二万の散財であった。

Coh:
Raster-NotonやMEGOからもリリースのあるCohことIvan Pavlovの演奏。ノートPCによるエレクトロニカ的な内容。その音楽は生音のサンプルやグリッチ音によって構成された場面転換の多い、バラエティー豊かな展開をみせた。ただ、その場面転換が頻繁過ぎて、いい感じに盛り上がるCarsten Nicolai的なパートがあっても、すぐに切り替わるのがやや残念。そのようなグリッチでミニマルなパートにもっと長く浸り込みたいと思えた。

Peter Christopherson:
ビッグネーム故、恐らくはトリであろうと予測していたのが、二番手で出演ということで意表をつかれた。それにしてもTGのメンバーが、TG新譜の発売に合わせて来日となれば、いつの日かTG本体が観られるのではないかと期待したくもなる。さて、Peter Christophersonはうやうやしく登場し、おもむろに自らの鼻腔にローションを塗りたくる。一体何が始まるのかと思ったら、不気味なマスクを傍らのスチロール箱から取り出し、そのマスクに連結されたチューブを鼻腔に突っ込む。そしてまるでレクター博士のようなレザーマスクを装着し終え、PowerBookや機材を操作する。どうやらこのマスクは楽器であるらしい。その音楽は映画音楽的、アンビエント的なものであり、綺麗な生音サンプルの使用も多く、そこにヴォイスが被せられる。一般的な意味で綺麗で音楽的な内容ではあるが、それをPeter Christophersonがやるからこそ、とても面白く感じる。観客もじっくりと微動だにせず聴き入っていた。比較的短めに数曲を演奏し終了。

Esplendor Geometrico:
そしてArturo LanzとSaverio Evangelistaによるスペイン(Arturo Lanzは現在北京在住だが)の鉄鋼業系インダストリアル・テクノイズユニット、Esplendor Geometricoの出番となる。Saverio Evangelistaはヘッドホンで出音をモニターをしながらノートPCに向かい、冷静かつ几帳面そうに根幹となるサウンドを担当し、Arturo Lanzは使い込まれたキーボードとアジテーションを担当する。Arturo Lanzのキーボードには金属的な工場の騒音のようなノイズがアサインされており、Saverio Evangelistaによるインダストリアルなリズムに合わせて激しいアクションで叩きまくる。そりゃキーボードが傷む訳だ。そしてArturo Lanzはマイクを手にしてステージ前の仕切りパイプに乗って、激しくアジテーションする(スペイン語の巻き舌アジテーションがまた面白い)。EGやVivenzaは音楽の構造自体はEBMやミニマルテクノ的であるが、そこで用いられるサウンドは完全に鉄鋼業系ノイズである。その扇動的でインダストリアルなサウンドは、強い高揚感と初期衝動を解き放つ快感に満ちている。まるで巨大工場の奥深くで機械の騒音を聴いているかのようだ。終始、Arturo Lanzはアグレッシブであり、キース・エマーソンばりにキーボードと格闘したり、仕切りパイプの上に仁王立ちになって叫んだり、そのパイプから滑り落ちたり、さらにそのパイプをガンガン蹴って歪めたり、マイクを持ってフロアに降りアジテーションしたりと忙しい。煽動された客も大盛り上がりで拳を突き上げ叫ぶ。これはノイズマニアもテクノ好きも一緒になって聴くことの出来る希有な音楽だ。バックに映し出されていたモーショングラフィックスやCGも、インダストリアルなサウンドに似合うシンプルで構造主義的なものであった。私も汗だくになって楽しんだ。

Robert Gorl:
セッティング中に半透明のビニールがフロアとステージを仕切るように張られ、フロアからは出演者の姿はうかがえない。このような特殊な状況下で、突然ハードなミニマルテクノが流れ出す。こうなれば観客はもう音に没入して踊るしかない。DAFの片割れでもあるRobert Gorlは、Disko-Bから盛んに作品をリリースしていることからも分かるように、90年代に入って以降、主にテクノ/ハウスの文脈で活動して来たといえる。NDWの時代、DAFとして活動していた頃の作品はニューウェーブ繋がりでノイズ・アヴァンギャルド関連音楽として聴いていたが、90年代以降のソロ活動は殆ど追っていなかった。このような不勉強な自分ではあるが「E2-E4」からBasic Channelに至るドイツのエレクトロニックミュージックについては一応聴いてきており、所謂その手の音楽も嫌いではない(むしろ好きか)。しかしシーン全体としてのテクノ/ハウスには結局深入りせずに来た。テクノ/ハウスに私がついて行けなかった理由は、テクノ/ハウスの持つR&Bのような艶やかなグルーブ感、ソウル感に溢れた側面とクラブカルチャーに馴染めなかったことにある。むしろ機械的でインダストリアルの文脈で読み解くことが出来るようなテクノ/ハウス〜エレクトロニックミュージックこそが本当に聴きたいものだった(なのでアシッドハウスやBasic Channelは聴ける)。その点、Robert GorlのストイックなミニマルテクノはBasic Channelに通じるものがありとても楽しめた。一貫して四つ打ちのリズムが維持される、バキバキのミニマルにフロアも盛り上がる。最後にビニールを破って現れたRobert Gorlのゲイ特有のとても良い笑顔を見た時、とても幸せな気分を感じたのは私だけではあるまい。アンコールにも応えて演奏を終了。ちなみにDJとしてのプレイではなく、演奏にはノートPCを使用していた。

じっくりと聴かせるタイプのPeter Christophersonを前に持って来て、ノイズ・インダストリアルミュージック=エレクトロニックミュージックであることを証明するかのようにEsplendor Geometricoを次に演奏させ、最後にRobert Gorlを持ってくることで、彼らの音楽を典型的なテクノ/ハウスの文脈から、エレクトロニックミュージック/インダストリアルミュージックの文脈へと奪還する。この日の出演者の演奏も全て素晴らしかったが、主催者であるアルテクニコの着眼点とイベント構成もユニークかつ、とても納得出来るものだった。正直クラブカルチャーなんてものは、自分にとってはどうでもいいのだ。終演後Peter Christophersonと記念写真を撮らせてもらい、Arturo Lanzにサインをもらい、Robert Gorlと握手し、私のオタク心も大いに満足した一日だった。

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2007年04月20日 23:06に投稿されたエントリーのページです。

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