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ノイズにおける三つの評価基準

私なりのノイズに対する価値の基準を整理したい。佐々木敦は過去の「電子雑音」にてノイズを音そのものとして聴取し評価する旨の発言したと記憶している。これは大筋で理解出来る評価なのだが、ノイズの持つ意味性についての考えがやや短絡的との印象を当時抱いた。ノイズの意味性をどう評価するかについてはもう少しよく考える必要がある。

芸術を芸術に向かわせるのか(=形式主義)、表象の快楽的聴取(=動物的快楽主義あるいは文脈を無視した消費文化)を重視するのか、芸術を状況/政治へ向かわせるのか(実践/運動として)、大まかに言ってノイズへの評価基準はこの三点に分類される。

各評価基準について整理する。

一つめの「芸術を芸術に向かわせる(=形式主義)」についてはポピュラー音楽領域における音響実験としてのノイズが価値あるものとして該当する。P16D4やSBOTHI、Organum、ダダ/アンチ/否定としてのHatersやTNB、アクショニズムの末裔としてのSchimpfluch Gruppe一派、より広義では初期megoやジム・オルークあるいはインプロ系ノイズやサウンドアートなど。これらのノイズは自己言及的に、あるいは反動的にダダ/アンチ/否定として、音楽の形式的側面、その制度を実験的に解体〜再編成する。個人的にこの評価基準は最もよく用いるものである。

二つめの「表象の快楽的聴取(=動物的快楽主義あるいは文脈を無視した消費文化)」については90年代後半以降のDJ文化に代表される聴取のスタンスと言い換えてもよい。むしろこれはリスナー側の問題であり、あらゆるノイズと音楽がここに含まれる可能性がある。該当する作家名は挙げにくいが、所謂ハーシュノイズのある一側面(あくまで一側面である)が、より広義ではエレクトロニカ/音響系への評価の多くがここに立脚していると考えられる。当然これは音楽の雰囲気に寄りかかったものであり、結局は単純極まりない趣味の問題である。ノイズや音楽を聴いて、気持ちいいとか泣いたとか耽美とか暗黒とかモンドとか言ってる連中はこの評価基準を用いている。

三つめの「状況/政治へ向かわせる(実践として)」については、最もややこしい。80年代であればTGのような情報戦略、脱構築としての方法論を取るものがここに該当したであろう(余談だがレトリスム映画や、政治的動機から映画的モンタージュを脱構築させたゴダール、より直接的に映画=運動を実践した足立正生は映画の領域における該当例である)。80年代のノイズは情報戦略の手段、価値観の撹拌を意図して悪趣味~反社会的なモチーフをこぞって使用したが、それらはあくまで手段であったと言える(その反面ノイズは悪趣味なモチーフの使用から、マイナス文化愛好家を引きつけることになる。リスナーだけでなく、ノイズ作家本人も手段として反社会的モチーフを使用しているのか、ただ単に悪趣味なものが好きなだけのか、はっきりしない場合も多い。ただ単にそういったものが趣味である場合には、上記の表象の快楽的聴取に分類していいだろう)。

この80年代的な情報戦略、脱構築アプローチは秋田昌美の指摘通り、今日ではその有効性は薄まった。しかし一方において、政治的パワーエレクトロニクスとネガティブなハーシュノイズがやや転換されたかたちでの反社会的意味を持つに至っている。実践であれシンボル化された代行としての表象であれ、彼らは極めてモチーフやテーマに対してシリアスであり、直接的であり、それ故に価値を持ち得ている。ここではGenocide Organ、Grey Wolves、そしてAtrax Morgueなどが価値あるものとして該当するであろう。多くの場合、彼らにとって反社会的モチーフは手段ではなく、目的に直結されたもの(あるいはその代行)である。これは「社会的カテゴリー:音楽」における目的を持った実践/運動である(パーソナルなものであれ社会全体に関わるものであれ)。

個人的には、そのなかでも社会全体に関わろうとする政治的パワーエレクトロニクスに特に強い関心を抱いている。パーソナルな問題は結局はその作家個人のものである(またしても余談であるが、同じ理由において私は映画におけるパーソナルドキュメンタリーや日記映画に対して全く興味を持てない)。それよりも今日の状況/政治へ目を向けること、そして実践/運動を音楽のカテゴリーにて行うノイズ作家のほうが共感を抱ける。それは我々の所属する社会の状況/政治に対して能動的に向き合うことでもある。

以上、極めて大雑把な分類であるが、この問題については今後も考えて行きたいと思う。

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2007年08月22日 00:57に投稿されたエントリーのページです。

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