
(Streamline/CDx2)
クリストフ・ヒーマンのStreamlineからの二枚組、まだオルークが大学で音楽を学んでいた時期の作品の発掘であり、リリースにあたってリマスターが施されている。ヒーマン、チョークによるMIRRORのような、電子音によって丹念に制作さたドローン作品である。現代音楽のドローン作品は往々にしてコンセプト先行ある場合が多いのだが、そこはノイズやフリー、すなわち実験的ポピュラー音楽に当時既に関わっていたオルークらしく、細部まで音響そのものに対するフェティシズムが詰め込まれており、分かり易くて良い(表現とは必ずしも分かり易いのが良いわけではないが)。
初期のオルークに顕著な、溺水の感触がよく表れている。揺らめくドローンは、薄い皮膜のように折り重ねられ淡々と持続する。人は水に浸かるとき、身体を包み込む液体の重さを感じる。たとえ身体を動かしても、水は包み込んだ身体を離そうとはしない。そして、ゆっくりと麻痺させるように、羊水のなかに浸かる胎児のように、水のなかで身体の境界は揺らめく。そこでは怖れではなく、ある種の安堵にも似た感覚が呼び起こされる。それは衰弱の感触であり死の感触でもある。この溺水の感触は、日付が変わり、朝を迎えるまでの、夜の暗さにもよく似る。ここでも身体は大きな、平坦な静寂と暗さに包まれる。
現在のオルークは音楽に対して、この頃には間違いなく持っていたであろう未知なるものへの好奇心があまり感じられない。すなわちルーチンワークというか、音楽への諦観を感じながら既成の安定した音楽形式に乗っかっているように思えてならない。昔のスタンスを取り戻して欲しいものだと思う。
本作はデヴィッド・バーマンに捧げられている。