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WERKRAUM - Early Love Music

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(Ahnstern/CD, MCD)

Axel Frankを中心として、楽曲ごとにChangesのNicholas Tesluk、Robert N. Taylorをはじめとした、数多くの音楽家が参加するドイツのネオフォークユニットWerkraumの傑作。本作は通常版CD、木箱入りCD、LPという三つのバージョンでリリースされており、内容も若干異なる。彼らによって演奏される楽曲の多くはトラッドやフォークソングのカヴァーであり、音楽の印象は基本的に70年代英国トラッド&フォークに近い。そこに楽曲によっては若干サイケデリックな要素を付け加えた感じである。ここでは木箱入りCDについてレヴューするが、引用元に意味が含まれているものが多いので、分かる範囲でリンクをつけたいと思う。

「Beware The Jabberwock!」は、Donovanの「Jabberwocky」(http://jp.youtube.com/watch?v=PnqK-1CPxLk&feature=relatedhttp://jp.youtube.com/watch?v=uQTDIHb15Jc&feature=related/こちらはアニメーション版)のカヴァー。ルイス・キャロルからとられた歌詞を、ChangesのNicholas Teslukが歌い上げる。アコースティック楽器群による哀愁感あるアレンジが素晴らしい。
「La Marmotte」はトラッドのカヴァーであるが、歌詞はベートーヴェンもテーマとして作曲したというゲーテの風刺劇の一節から取られている。女性ヴォーカルは前作から引き続いてAntje Hoppenrathによる。引用元のトラッドは「Star of the County Down」(http://jp.youtube.com/watch?v=9k9-iOepDPk&feature=related)であるようで、英国フォークロック寄りのアレンジが加えられている。ちなみにShirley Collins and Albion Country Band「No Roses」に収録されていた「Murder Of Maria Marten」もこのトラッドのカヴァーである。もちろんShirley CollinsもWerkraumも、どちらも素晴らしい出来。
「Ein Lied Von Lieb Und Treu」は歌詞はKarl Römerからとられているらしいが、私にはよく分からない。楽曲はアコーディオンによるアレンジが美しいフォークである。
「Santy Ano」はトラッドのカヴァー(http://jp.youtube.com/watch?v=JnO_IuOT9ks)。勇ましい曲調にハーディーガーディー等によるアレンジが映える。
「Slâfest Du, Vriedel Ziere?」は12世紀の音楽家ディートマー・フォン・アイストからとられているが、これも私にはよく分からない。リュートとアコースティックギターによる静かなフォーク。女性ヴォーカルはAntje Hoppenrathによる。
「Song For Erik」はNicholas TeslukのヴォーカルとAxel Frankのアコースティックギターによる10分にも及ぶ楽曲。アンビエントな展開もある。
「The Dream」もNicholas TeslukとAxel Frankの二人による演奏だが、この曲ではオルガンが導入されており、何ともプログレ的な印象となっていて面白い。
「Allgemach」はアーダルベルト・シュティフターの詩がSturmperchtのMax Perchtによって語られる楽曲。
「Der Schmied」はSteeleye Spanも「The Blacksmith」(http://jp.youtube.com/watch?v=3WGIo_y7jdI)としてカヴァーしていたトラッドであり、これも英国フォークロック寄りのアレンジが加えられている。
「Beyond The Evening Star」はChangesのRobert N. Taylorのヴォーカルによるサイケデリックなフォーク。
「The Smiling Of The Rose」はHerr Windのヴォーカルによる、これもサイケデリックなフォーク。
「Une Jeune Fillette」はAntje HoppenrathとAxel Frankのヴォーカルによる、優美なトラッドのカヴァー(http://jp.youtube.com/watch?v=NJ9xqBsROBQ/「めぐり逢う朝」の一場面より)。リュートやハーディーガーディーによるアレンジが素晴らしい。
「Die Rechte Braut」の歌詞はKonrad Weissからとられているらしいが、これも私にはよく分からない。楽曲はThomas Natschinkiのカヴァーのようであり、哀愁漂うフォークへとアレンジされている。
「Sanctity And Steel」はLady MorphiaのNick Nedzynskiがヴォーカル、Chris Nedzynskiがドラムにて参加したネオフォーク。

続いてボーナスCDに移る。
「Tous Les Jardins Du Monde」もトラッドである「Une Jeune Fillette」のカヴァーだが、ここではAxel Frankひとりによってリュートで演奏されている。
「Casey」はRobert N. Taylorがヴォーカルにて参加したフォーク。Shawn Phillipsのカヴァー(http://jp.youtube.com/watch?v=Ojde4_oDc_E&feature=related)である。
「Sommermale」はシンプルで物悲しい、弾き語りによるフォーク。ここでもAxel Frankひとりによってアコースティックギターとピアノで演奏されている。
最後は再びAntje HoppenrathとAxel Frankによる「Une Jeune Fillette」の別ヴァージョンで締めくくる。

本作の素晴らしさは欧州の伝統文化やトラッドを参照することで、自らの音楽を消費物としての音楽に押し込めるのではなく、欧州の文化の体系そのものに自らの音楽を接続させようとしているところにある。この意思は60〜70年代の英国トラッド&フォークを担った音楽家らと同質のものであると思える。これはナショナリズムというより、パトリオティズムに近い。日本においては、ネオフォークを取り上げる雑誌は皆無だが、Molehillには入荷すると思うので是非手に取ってみてほしい。

それにしても本作に限らず、ネオフォークの多くがノイズ・インダストリアル系列のレーベルからリリースされているのはユニークな現象だと思う。
ネオフォークの担い手たちは、明らかに普遍的な感情としてのパトリオティズムに依拠して自らの音楽を演奏している。それに対して80年代のノイズ・インダストリアルの担い手が政治的あるいは民族的題材を取り扱う時、その多くはファシズムにまつわる諸々を反社会的な記号として使用されていた。それは脱構築のためのノマド的差異産出体であることを意図したものである。
しかし90年代に入って、欧州で政治的なパワーエレクトロニクス・マーシャルインダストリアルが勃興してくると、80年代的なノイズ・インダストリアルの記号的戦略は後退してゆくようになる。そして表面的な戦略としてではなく、作品の主体として政治的あるいは歴史的題材を取り扱う方向へ状況はシフトしてゆく。そこでは戦略的に狙って仕掛けるような(ある意味では子供じみた)ファシズムの記号の氾濫は姿を消し、どちらかというと自己の本心そのままに、ストレートに政治的あるいは歴史的題材が使用されるようになる。
このなかでネオフォークの担い手と、政治的なパワーエレクトロニクス・マーシャルインダストリアルの担い手が互いに共鳴し合ったのが、この現象の原因であったと思う。先述したようにネオフォークの担い手たちは普遍的な感情としてのパトリオティズムに依拠しており、これは自己の本心そのままに、ストレートに政治的あるいは歴史的題材を取り扱う政治的パワーエレクトロニクス・マーシャルインダストリアルの担い手の心性と極めて近しい*1。
以上はあくまで私的な見解であるが、ノイズ・インダストリアル、あるいはネオフォークの社会的意味は時代に応じて変化して来ている*2。それは文化の社会的機能を考えるうえで、多くの示唆を含むものである。

註:
*1. しかし政治的あるいは歴史的題材を使用したとしても、結局は表面的なファッションに留まる場合もあり、または逆に本気で極端な政治思想に走る場合もある。様々なケースがあるため、あまり普遍化して言うのも無理があるのだが。
*2. ここでは実験音楽としてのノイズ・インダストリアルは除外して話を進めた。ここで問題としたのは、より社会的な側面の強いノイズ・インダストリアルについてである。

追記:
メールで感想を送ってみたところ、Axel Frankから返事を頂いた。そこには感謝の言葉と、日本にWERKRAUMの聴衆がいることへの驚きと、自分たちの音楽がフォークと中世音楽に深く関係していることなどが述べられていた。

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2008年09月28日 15:37に投稿されたエントリーのページです。

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